取締りと罰則について

「特殊車両通行許可制度」は「道路法」及び「車両制限令」に基づく制度であり、「道路法」において道路管理者は「取締り」を実施し、違反者に対しては「罰則」を科すことが出来ることになっています。

取締りについて

道路管理者は、道路の構造を保全し、または交通の危険を防止するため、管理する道路において「取締基地」や「自動計測装置を設置」し、「取締り」を実施しています。

1.取締方法

道路管理者は、指導・取締りを実施するに当たっては、警察署、他の道路管理者、陸運局等と連携し、総合的で効果的な合同取締りを実施しています。
主に、「指導取締基地」で車両を引き込み取締る方法と「自動重量計測装置等」による取締る方法の二種類があります。

① 取締り基地による取締り
道路脇に設置された「指導取締基地」に車両を引き込み、「重量・寸法」の計測を行い、法令違反者には「措置命令」や「指導警告」を実施しています。

車両制限令違反が1回目では「警告」のみで事業者宛に文書又は電話での「行政指導」となります。

車両制限令違反が2回累積すると「警告」や「是正指導」(国道事務所等に呼び出され対面で「行政指導」)となります。

車両制限令違反が3回累積すると国土交通省のホームページに1年間是正指導内容等が「公表」されます。掲載後1年以内に再び違反した場合はその月から1年間継続で掲載されます。

車両制限令違反が4回累積すると「公表」され「特車許可の取消し」や、「告発」の対象となります。

なお、直近の警告から1年間違反しなければ累積回数は消滅します。

② 自動重量計測装置(WIM)による取締り
基準を超える走行車両の重量、車両を特定するためのナンバーを常時測定し、特車許可と照らし合わせ違反車を判定します。

軸重20t超で走行を1ヵ月中に2回又は軸重20t以内で走行を3ヵ月中に20回
自動重量計測装置で発覚した場合、1回目の車両制限令違反となり「警告」(事業者宛に文書又は電話での「行政指導」)や「是正指導」(国道事務所等に呼び出され対面で「行政指導」)を受けることになります。

2回目以降の車両制限令違反は軸重20t超で走行を1ヵ月中に1回となり厳しくなります。軸重20t以内で走行を3ヵ月中に20回はそのままで変わりません。

4回目の車両制限令違反では国土交通省のホームページに1年間、是正指導内容等が「公表」されます。掲載後1年以内に再び違反した場合はその月から1年間継続で掲載されます。

5回目の車両制限令違反では「公表」され「特車許可の取消し」や、「告発」の対象となります。

※なお、自動重量計測装置(WIM)違反の回数は車両ごとではなく会社ごとでカウントされます。

※直轄国道での例です。高速道路会社等の警告書・措置命令等の発出基準が異なる場合があります。

2.道路管理員

道路管理者は、道路の管理に際して行う「指導・取締り」に係る権限は、現場責任者として「道路管理員」に行わせることができます。
「道路管理員」は、「指導・取締り」を行う際は、服装を統一し、保安帽と「道路管理員国土交通省」等と表示した腕章の着用が義務付けされています。

3.取締調書の作成

道路管理者は、「指導・取締り」を行った場合、「取締調書」を作成します。この「取締調書」は、「許可の取消処分」を行うための根拠資料になるとともに、他の道路管理者への「通報」、警察への「告発」等の基礎資料に用いられます。

4.警告と措置命令

道路管理者は、「取締り」の結果、許可なく「一般的制限値」を超える車両を通行させ、または道路管理者が付した通行条件に違反して車両を通行させていることが判明した場合においては、以下の措置が講じられます。

① 違反の程度が「軽微」であり、「措置命令処分」を行う必要がないと認められる場合は、「警告書」が発出されます。

② ①以外の場合において、重量等の軽減等の措置が可能である場合には重量を軽減する「措置命令」を、分割等が不可能である場合は必要に応じて通行の中止等の「措置命令」が記載された「措置命令書」が発出されます。

5.違反を繰り返し行った場合にとられる措置

以下の条件に該当する悪質な違反者は、「行政指導」(国道事務所等に呼び出され対面での是正指導)、行政指導内容の「公表」(国土交通省のホームページに社名等が掲載されます)、「許可の取消し」、警察へ「告発」(極めて悪質な場合)の対象となります。

① 許可なく若しくは許可条件に違反して特殊車両を通行させ、死亡重傷などの事故または道路を損壊させる重大事故を発生させたとき。

② 許可なく若しくは許可条件に違反して特殊車両を通行させ、通行の中止、総重量の軽減、徐行などの道路管理者の命令を受けながら、それに違反したとき。

③ 許可なく若しくは許可条件に違反して特殊車両を通行させることを常習的に行ったとき。

※措置命令とは
違反が疑われる車両を安全な場所に停車させ、車両総重量や車幅の計測、特殊車両通行許可証の確認を経て、違反の有無を判断し、違反の程度が軽微な場合は「指導警告」、重大な場合は「措置命令」(行政処分)を当該違反車両の運転手に命じます。一般的に次のような「措置命令」(行政処分)があります。

① 積荷の減載
安全な場所へ移動し、積荷を通行できる重量まで減らすことを命じます。

② 許可を受けるまで車両を停止
安全な場所へ移動し、特殊車両通行許可を受けるまでの間、車両を停止させます。

③ 指定した場所からの流出(高速道路の場合)
道路管理者が指定したインターチェンジなどから退出を命じます。

④ 許可条件を満たして通行
許可証で指定された通行条件(通行時間帯、誘導車配置など)を満たして通行することを命じます。

この「措置命令」に違反したり、重大な交通事故を発生させた場合や、常習的に違反を繰り返している場合は、国道事務所等に呼び出され「対面での是正指導」や「事業者の公表」、「通行許可の取消し」、警察への「告発」をされることになります。

※車両制限違反者への高速道路「大口割引停止措置」
平成28年10月1日から、東日本、西日本、中日本高速道路会社NEXCOの3社で実施をしていた車両制限令違反に基づく高速道路料金の大口・多頻度割引制度停止措置に、首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路の3社が加わり、6社すべての管轄高速道路でこの停止措置が適用されるようになりました。

今回の変更で、高速道路上での違反点数は6社合算となり、以前よりも規制が厳しくなりました。3か月ごとの累積違反点数30点以上が複数回続くと、割引停止やETCコーポレートカードなどの利用停止措置があります。

※告発とは
「措置命令」に違反したり、重大な交通事故を発生させた場合や、常習的に違反を繰り返している場合は、道路管理者は違反者を警察に「告発」します。
「告発」された違反者は「罰則」を受けることになります。

即時告発制度について

国土交通省は平成26年5月9日付けで「道路の老朽化対策に向けた大型車の通行の適正化方針」を策定し、今後、悪質違反者には厳罰化していくことを盛り込んで公表しました。この方針に関係する具体的な施策の一つとして、平成27年1月23日に車両総重量が車両制限令の一般的制限値よりも2倍以上超過している悪質違反者については、違反事実をもって「告発」を行う「即時告発」(レッドカード)の実施方針が打ち出され、同年2月23日に施行されました。
高速道路機構及び高速道路6会社においても、この方針を参考に、悪質違反者への厳罰化を図っています。

「基準の2倍以上の重量」の計算例

① 無許可車両の場合のレッドカード例
車両総重量が「基準×2」以上の車両

a.セミトレーラ連結車(特例5車種・最遠軸距離10m以上)の場合
一般的制限値27t×2(重さ指定道路・指定道路以外)=54t

b.セミトレーラ連結車(特例5車種以外)と単車の場合
一般的制限値25t(最大)×2(重さ指定道路)  =50t(最大)
一般的制限値20t(最大)×2(重さ指定道路以外)=40t(最大)

② 特殊車両通行許可を受けた車両の場合のレッドカード例
許可を受けた車両の総重量から車両の総重量の最高限度を減らした重量に、車両の総重量の最高限度の2倍の重量を加算した重量になります。

車両総重量が「基準×2+(許可総重量-基準)以上の車両

a.セミトレーラ連結車(特例5車種・最遠軸距離10m以上)の場合
(通行許可を受けた総重量が36tの場合)
一般的制限値27t×2(重さ指定道路・指定道路以外)+(36t-27t)=63t

b.セミトレーラ連結車(特例5車種以外)の場合
(通行許可を受けた総重量が50tで重さ指定道路の場合)
一般的制限値25t×2(重さ指定道路)+(50t-25t)=75t

(通行許可を受けた総重量が50tで重さ指定道路以外の場合)
一般的制限値20t×2(重さ指定道路以外)+(50t-20t)=70t

罰則について

「特殊車両通行許可申請」において、許可なくまたは許可条件に反して特殊な車両を通行させた者、または道路監理員の命令に違反した者などに対しては、「罰則」が定められています。この「罰則」は、違反した運転手ばかりでなく、事業主体である法人または事業主も、同じように科されます(両罰規定)。
主に道路管理者から警察へ「告発」された場合に罰せられます。

① 車両の通行が禁止または制限されている場合、これに違反して通行させた者、許可条件に違反した者は6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金(道路法第103条第4項)

② 道路管理者または道路監理員の通行の中止などの命令に違反した者6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金 (道路法第103条第5項)

③ 車両の幅、長さ、高さ、重さ、最小回転半径などで制限を超える車両を道路管理者の許可なく通行させた者、または許可条件に違反して通行させた者は100万円以下の罰金(道路法第104条第1項)

④ 特殊な車両を通行させるとき、許可証を備え付けていなかった者は100万円以下の罰金(道路法第104条第2項)

⑤ 車両の幅等、個別的に制限されている道路に車両を通行させて、通行の中止、総重量の軽減、徐行などの道路管理者の命令を受けながら、それに違反した者は50万円以下の罰金(道路法第105条)

⑥ 法人の代表又は法人若しくは人の代理人、使用人その他従業者が、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または事業主に対しても同様の罰金を科する(道路法第107条)

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