通行条件と個別審査について

道路は一定の構造基準により造られています。そのため、道路法では道路の構造を守り、交通の危険を防ぐため、道路を通行する車両の大きさや重さの最高限度を次のとおり定めています。この最高限度のことを「一般的制限値」といい、いずれか一つでも超えた車両は「特殊車両通行許可」を得なければなりません。

一般的制限値

車両の諸元

一般的制限値(最高限度)

2.5メートル

長 さ

12.0メートル

高 さ

3.8メートル ※

重 さ

総重量

20.0トン ※

軸重

10.0トン

隣接軸重

○隣り合う車軸の軸距が1.8m未満  18.0t
(ただし、隣り合う車軸の軸距が1.3m以上、かつ隣り合う車軸の軸重がいずれも9.5t以下のときは19t)
○隣り合う車軸の軸距が1.8m以上  20.0t

輪荷重

5.0トン

最小回転半径

12.0メートル

※高さ指定道路は4.1メートルまで
※重さ指定道路は25トンまで

「一般的制限値」を超えているからといって、「特殊車両通行許可申請」をしても必ず通行が「許可」されるわけではなく、申請する車両の大きさと重さに対し、通行しようとする道路の広さや橋の強度に応じて、「許可」、「通行条件付きの許可」、「不許可」のいずれかの処分が下されます。

通行条件とは

審査の結果、道路管理者が通行することがやむをえないと認めるときは、通行に必要な「条件」を附して「許可」します。この「条件」を「通行条件」といいます。

「通行条件」には次のようなものがあります。

区分
記号

重量についての条件

寸法についての条件

A条件

徐行等の特別の条件を付さない。

徐行等の特別の条件を付さない。

B条件

徐行および連行禁止を条件とする。

徐行を条件とする。

C条件

徐行、連行禁止および当該車両の前後に誘導車を配置することを条件とする。

徐行および当該車両の前後に誘導車を配置することを条件とする。

D条件

徐行、連行禁止および当該車両の前後に誘導車を配置し、かつ2車線内に他車が通行しない状態で当該車両が通行することを条件とする。
道路管理者が別途指示する場合はその条件も付加する。

無し


通行条件 (出典:(財)日本道路交通情報センター 資料)

 

1. 「通行条件」は寸法においてはAからCの3種類。重量においてはAからDの4種類があります。

「A条件」は特に「通行条件」が付きませんので最も通行しやすいのに対し、「D条件」が最も厳しい条件となります。

① 徐行とは
橋梁・交差点・屈曲部・狭小部・上空障害箇所等問題箇所のみの徐行車両が直ちに停止することができるような速度で進行することです。

通行するのに問題となる箇所のみ徐行すれば良いので通行経路全てで徐行
しなければいけないわけではありません。

② 連行禁止とは
2台以上の特殊車両が縦列をなして同時に橋梁等を渡ることを禁止することです。

これは橋梁を通行する際に課されます。重量により橋梁のかける負担を考慮しての措置です。

③ 併進禁止とは
最も厳しいD条件では、特殊車両の前後に「誘導車」を設置して、橋を特殊車両が通行する際は「誘導車」が特殊車両以外の一般車両も規制(対向車線も)して、橋の上にはその特殊車両のみが通行するようにすることです。

④ 誘導車設置とは
「誘導車」は、カーブや厳しい交差点部などを通過する際に他の交通安全を確保するための誘導処置や、橋梁などの構造物の保全などのために配置するものです。「C条件」と「D条件」に課せられます。

重量についての
条件

車両が重いか、または耐荷力が低い橋梁等で車両を通行させる場合には、橋梁の同一径間内にその車両のみを通行させる必要があり、そのために当該車線上から他の車両を排除し、徐行するために当該車両の前後に誘導車を配置します。

寸法についての
条件

車両の寸法が大きい、または道路構造の空間寸法が厳しいために、曲線部の通行の際やトンネル等を通行する際に高さの関係で他の車線にはみださなければ通行できない等の車両の場合には、交通の危険を防止する観点から、徐行し、かつ当該車両の前後に誘導車を配置します。

「誘導車」は一般的に普通乗用車などを用います。また、他の交通に対し、特殊車両を誘導していることがわかるよう「特殊車両誘導中」といった表示を前後誘導車に示すことが望ましいです。なお、「道路運送車両法」(運輸局管轄)により「誘導車」に備え付けることが出来る点滅灯の色は緑色となり、取付けの有無は任意となります。

誘導車の役割の例

(1)交差点折進時などのほかの車線を侵すこととなる場合には、他の車両等の安全確保のための措置を講じます。

(2)特殊車両の前方の安全確認及び走行速度を遵守するようにします。

(1)橋梁同一径間内の他の車両を排除します。

(2)交差点折進時における他の後方車両の安全確保を行います。

(3)後続車両が特殊車両を追い越し、または停止する際の誘導を行います。

(4)積載貨物の固縛状態を確認します。

2. 夜間通行条件

以下のものは夜間通行(21:00〜6:00)条件となります。
・D条件となる車両
・車両幅が3mを超える車両(かつ、寸法の条件がC)

個別審査とは

「個別審査」とは、通行しようとしている道路に対し申請車両が物理的に通れるかどうかを各道路管理者が精度の高い検討を申請ごとに行って許可の可否を決定する審査方法のことです。

「個別審査」のある申請の場合、申請先の道路管理者と個別審査先の道路管理者の間で申請車両が通行可能かどうか書類のやり取りを行います。これを「協議」といいます。

この「協議」の結果(個別審査先の道路管理者の判断)によって、「許可」、「通行条件付きの許可」、「不許可」のいずれかの処分が下されることになります。

1.「個別審査」は主に次の理由で発生します。

① 狭小幅員
申請車両の幅に対して道路の有効幅員が狭い場合に発生します。

② 上空障害
申請車両の高さ(積荷を含む)に対して、トンネルの天井や高架下の高さが十分にあるかどうか判断が必要な箇所で発生します。

③ 曲線障害
申請車両がカーブを曲がれるかどうかで発生します。

④ 交差点
申請車両が交差点を曲がれるかどうかで発生します。

⑤ 橋梁
申請車両の総重量及び寸法と通行しようとする橋梁の強度に応じて発生します。

⑥ 高速道路
申請車両の幅、長さ、高さ、重量等で総合的な判断で発生します。

⑦ 通行規制
各道路管理者によって車両の通行を規制する措置で、一定の大きさの車両は通行禁止となっていたり、夜間のみ通行を認めたり、引火性の強い危険物を積載した車両の通行を禁止したりと様々なものがあります。

⑧ 未収録
特車システムの「道路情報便覧」に情報が登録されていない「未収録」の道路を通行する場合に発生します。

「道路情報便覧」に情報が登録済みの道路は、大型車両が通行した場合どのような条件で通行可能か申請前に分かるのに対し、「道路情報便覧」に情報が登録されていない未収録の道路は、直接道路管理者に申請車両が通行可能かどうか判断してもらう必要がある為、「個別審査」となります。

※「採択路線」とは、特車システムの「道路情報便覧」に情報が登録済みの道路をいいます。
「道路情報便覧」に情報が登録済みの道路の為、申請車両の通行の可否や通行条件が申請前に分かります。主に国道や都道府県道、一部の市区町村道の幹線道路が多く採択されています。

※「未採択路線」とは、特車システムの「道路情報便覧」に情報が未収録の道路のことをといいます。
「道路情報便覧」に情報が未収録の道路の為、「個別審査」対象の申請となり、申請先の道路管理者と個別審査先の道路管理者との間で「協議」が発生します。主に市区町村道や一部の都道府県道に多くあります。

「個別審査」が発生する申請で最も多い理由がこの「未収録」となります。
なぜなら、①~⑦に関しては「採択路線」で迂回路が存在すれば回避できますが、⑧未収録に関しては出発地と目的地で「未採択路線」を必ず通行しなければならない場合があるからです。

特に出発地で「未採択路線」を通行しなければならない場合は、毎回申請する度に「個別審査あり」の申請になってしまいます。

例えば、出発地の車庫の前面道路をA市が管理する「未採択路線」のA市道とした場合、前面道路である以上、必ず「未採択路線」であるA市道を通らなければならないので、未収録の「個別審査あり」の申請となり、同じ車両であったとしてもA市への「協議」が申請ごとに毎回発生することになります。

2. 個別審査無しの申請の審査期間

出発地から目的地までが特車システムの「道路情報便覧」に収録済みの「採択路線」のみの通行で到着でき、かつ、その途中で狭小、上空、曲線、交差点等の「個別審査」が発生していない申請の場合、「協議」が行われない為、審査期間が短くなります。

申請から許可又は不許可とされるまでの「標準処理期間」は次のようになっています。

① 新規申請及び変更申請の場合 3週間以内

② 更新申請の場合 2週間以内

上記の「標準処理期間」は、あくまでも「個別審査無し」の申請のみ適用され、「個別審査あり」の申請には適用されません。

なお、「オンライン申請」で「個別審査無し」の申請をした場合、申請先の国道事務所によっては優先で対応してもらえ、3日~2週間程度で許可証が交付される場合があります。

3. 個別審査ありの申請の審査期間

出発地から目的地までの間で一つでも「個別審査」がある申請の場合、前述した「標準処理期間」は適用されません。

「標準処理期間」が適用されませんので審査期間は次の理由により長くなります。

① 申請から審査開始までの順番待ち
申請したからといって、すぐに審査が開始されるわけではありません。
申請が混み合っている場合、審査開始まで申請の順番待ちが発生します。

申請先の混雑具合によって申請の順番待ち期間は異なります。1ヵ月待ちもあれば数ヵ月待たなければならない場合もありますので、申請前に申請予定先の道路管理者に確認してみると良いでしょう。

② 個別審査先の道路管理者の協議回答書待ち
「協議」とは、申請先の道路管理者と個別審査先の道路管理者との間で申請車両が通行可能かどうか書類のやり取りを行うことをいい、これに対する回答の書面のことを「協議回答書」といいます。

「協議」が混み合っている場合、「協議回答書」の返送まで順番待ちが発生します。

3日で「協議回答書」を返送する道路管理者もいれば3ヵ月近くかかる道路管理者もいます。

③ 申請先での許可証の交付待ち又は不許可処分
「協議回答書」が全て揃ったら許可又は不許可の処分が下されます。

許可証の作成にもやはり順番待ちがあり、申請先の混雑具合により期間は異なります。

つまり、「個別審査あり」の申請は、①申請の開始順番待ち+②個別審査先の道路管理者の協議回答待ち+③申請先の許可証交付待ちとなり、審査期間は非常に長くなるということです。

申請先、協議先の混み具合で大きく審査期間が異なってきますので申請は余裕をもって早めに行った方が良いでしょう。
(通行経路数が多く協議先も多いような申請は審査終了まで半年近くかかる場合もあります。)

 

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